知っているようで知らない「助詞」:後編
前回の「助詞」前編では、助詞の簡単な説明をし、さらに、キングオブ悩ましい助詞である格助詞「が」と副助詞「は」の使い分けをご紹介しました。
今回の後編では、悩ましい助詞三選の使い分け方を見ていきたいと思います。選んだ助詞は、意図せず、いずれも格助詞でした。格助詞って難しいんですね。
※前回の記事はこちらをご参照ください。
「駅へ向かう」か、「駅に向かう」か
~格助詞「に」と「へ」~
基本的な働きとして、「に」は場所を表し、「へ」は方向を表します。
「に」は到着点に焦点が当てられる一方で、「へ」は「~の方へ」のイメージで、より広い範囲、つまり到達点+それに向かう経路や方向性に焦点が当てられます。
例1)
母を迎えに駅に向かう。:駅が到着点。お母さんと駅で会うのでしょう。
母を迎えに駅へ向かう。:駅の方向へ向かう。もしかしたら駅に行く途中でお母さんと会うかもしれません。
例2)
〇へとへとになりながら、なんとか山頂に着いた。
△へとへとになりながら、なんとか山頂へ着いた。
→山頂が到着点で、そこに焦点を当てているわけなので、「に」が的確です。
例3)
〇台風は北へ向かっている。
△台風は北に向かっている。
→台風は特定の到着点に向かっているわけではなく、北の方へ向かっているので、「へ」がより的確と言えます。
「友人と会う」か、「友人に会う」か
~格助詞「と」と「に」~
「と」は共同者を表し、「に」は対象を表します。つまり、「友人と会う」ですと、会う人双方の行為となり、「友人に会う」ですと、会う人の一方的な行為になります。
例1)
AさんがBさんと話をした。:双方話し合いをしたことになります。
AさんがBさんに話をした。:AさんがBさんに話をしに行ったことになります。
例2)
彼と付き合います。:双方の行為として付き合う=交際するとなります。
彼に付き合います。:一方的な行為として交際することはできないですね。この場合、「彼のしていること」に付き合う=協力するとなります。
「雨が降る日」か、「雨の降る日」か
~格助詞「が」と「の」~
最後はどちらでもOKという格助詞のセットです。
「雨が降る」も「雨の降る」も主語+述語の関係になっていて、まとめて「日」に係っています。この場合、「が」も「の」も主格を表す格助詞です。「の」は、部分の主語(複文の成分中の主語)を表す場合に用いられ、「が」に置きかえることができるのです。
例)
「花の咲く庭」/「花が咲く庭」
「花の美しい庭」/「花が美しい庭」
「お弁当の入ったカバン」/「お弁当が入ったカバン」
おわりに
最後までお読みいただきまして、ありがとうございました。
今回この記事を執筆するにあたり、どの助詞を取り上げようか、選定作業を行いましたが、取り上げたい助詞ばかりでした。改めて、助詞の沼の深さを実感しました。一部の助詞は研究者がいろいろな自説を唱えていて、絶対的な正解がない場合もあります。理系の分野では、その性質上、未知や研究中というものが数多くありますが、まさか日本語という古くから広く使われているもので、研究中のものがあるとは知りませんでした。
今回の記事が少しでも皆さんのお役に立てばうれしいです。