翻訳ができるまでの話

2023年10月16日翻訳会社の「中の人」

MTSで取り扱う翻訳案件は、どんなに少量であっても完成までに複数の作業工程を経てクライアントに納品しています。1つの案件にかける工数は翻訳会社によって異なると思いますが、今回は弊社でどんな工程で翻訳を作成しているのかをお話します。

基本の流れ:案件の問い合わせ~納品

まずはクライアントの新規問い合わせが来てから、納品するまでの流れを説明します。

①クライアントから新規翻訳の問い合わせ
クライアントから新しく翻訳の問い合わせがくると、コーディネーターは翻訳データを確認し、クライアントの要望(希望納期や作業の詳細)をヒアリングします。

②翻訳者手配
ほとんどの場合クライアントの希望に沿った納期を翻訳者さんに提示し相談しますが、クライアントの指定納期がない場合は、翻訳者さんに対応可能な納期を提示してもらいます。また案件打診時に参考資料の有無や作業方法などの条件もお伝えし、引受可能か検討してもらいます。

③クライアントへ見積もりと納期の提示
翻訳者さんの予定が確保でき、翻訳以外(レイアウトや校正、納品前の検品)の作業も含めた納期が算出できたらクライアントへ納期と見積もりを提示します。その内容で合意が取れれば受注、もしクライアントの都合に合わなければ再調整または失注となります。

④翻訳の正式発注~翻訳以外の作業者手配
案件を受注したら翻訳者さんへ正式な発注連絡をして、作業の開始を指示します。レイアウトや校正担当者など、翻訳者さん以外の作業者も手配し、コーディネーターは案件全体の調整を行います。

⑤翻訳作業~成果物の検品(進捗管理)
案件にアサインされた各作業者が、コーディネーターから割り振られた日程と作業方法で業務を進めていきます。基本的にMTSでは翻訳⇒レイアウト⇒校正(必要があればネイティブチェック)⇒納品前の検品の順で作業します。まれに作業中にクライアントから追加指示(日程の前倒しや翻訳が完了したものからの分納、また参考資料の追加提供など)があるので、その場合はコーディネーターが作業者全員に情報共有し、日程の再調整をします。校正までの作業が完了し翻訳物が完成したら、コーディネーターが納品前に検品(最終確認)を行います。

⑥クライアントへの納品
検品(最終確認)が完了したら、コーディネーターがクライアントへ成果物を納品します。クライアントがレビューをした後に、翻訳内容の確認など追加作業が発生することがあるので、その場合は社内で対応するか、担当した翻訳者さんへ連絡し対応を依頼します。

翻訳作成(翻訳~校正)

次に翻訳作成の詳細を作業順で説明します。

翻訳作業

コーディネーターが翻訳者さんへ案件を打診する際、以下の情報を共有します。

  • 翻訳内容
  • 翻訳の分量
  • 納期
  • 参考資料の有無
  • 翻訳方法
  • その他作業に関する指示

翻訳者さんに依頼する翻訳方法は、以下3種類のどれかになります。

ナンバリング原稿での翻訳

「ナンバリング原稿」とは、翻訳原稿に手書きで訳出指示を記載したもので、その指示に沿って新規Wordに訳文を打ち込んで翻訳する方法です。PDFのように直接編集ができない翻訳原稿の場合、ナンバリング原稿で訳出を依頼することが多いです。

データ上書きでの翻訳

直接編集が可能なOffice系ソフト(Word、Excel、PPT)は、原稿データに上書きで翻訳を依頼します。文書の改定翻訳時は既存のデータ(旧文書)に直接加筆修正で翻訳していただくこともあります。

TradosPhrase TMSによる翻訳

CATツールにはたくさんの種類がありますが、MTSではTradosとPhrase TMSを使用しています。クライアントからCATツールでの翻訳を指示されている案件、参考資料から訳文流用ができる案件や、翻訳原稿内で繰り返し(原文の重複)が多い案件はCATツールで翻訳します。

レイアウト作業

翻訳会社によっては翻訳者がレイアウト作成まで対応することがあるようですが、MTSでは各案件にレイアウト担当者をアサインします。レイアウト担当者は、翻訳者から納品されたデータを受け取り、原文原稿に合わせて訳文のレイアウトを作成します。ナンバリング原稿で翻訳した場合は、ベタ打ち状態の訳文を、原文原稿に合わせて一からレイアウトします。データ上書きによる翻訳の場合は、元の原稿通りの仕様になっているかを確認しながら体裁を整えます。(リンク、相互参照、項番号、目次の確認と修正など)

校正作業

MTSでは社内の校正者をアサインする事が多いのですが、外注契約している校正者または校正可能な翻訳者さんへ依頼することもあります。翻訳者さん同様、案件の打診時に校正内容・分量・作業日程・参考の有無等を提示の上、MTSの校正マニュアルに沿った作業を依頼します。継続案件の場合や、今後改善すべき点などあれば、校正担当者から翻訳者さんに修正内容のフィードバックをすることもあります。

おわりに

翻訳会社によっては複数の作業(翻訳とレイアウト、コーディネーションと校正)を兼任する場合があると聞いたことがありますが、MTSでは分業して、それぞれが得意な作業に集中できるようにしています。翻訳納品後にどんな工程を経てクライアントの手元に翻訳物が届いているかを翻訳者さんが知る機会は少ないと思いますが、1つの翻訳が出来るまでの作業工程も知っていただければ幸いです。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。