翻訳クイズ和訳編「visit」
現役翻訳者や翻訳学習中の皆さんは、学生時代の英語の試験や英検、TOEICなど、いわゆる「英語のテスト」がお好きな方が多いのではないでしょうか。
そんなみなさんに「翻訳クイズ」をお送りします。
次の英日対訳文を読んで、修正すべき点を見つけてください。
下のほうに修正例を記載していますが、
「おっと、勢い余って答えが見えてしまったぞ」という方は、次回に向けて慎重にスクロールする練習を。
冬場は指がかじかむので、温かいお部屋で見ていただくのもよいかと思います。
問題文
原文:During the study period, clinical monitors will visit the study sites on a regular interval according to the monitoring plan in order to collect data specified in the clinical trial protocol.
訳文:試験期間中は、モニタリング計画書に規定された一定の間隔でモニターが実施医療機関に来院し、治験実施計画書に規定されたデータを収集する。
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解説
いかがでしょうか。修正してほしかったのは以下の下線部です。
修正例:試験期間中は、モニタリング計画書に規定された一定の間隔でモニターが実施医療機関を訪問し、治験実施計画書に規定されたデータを収集する。
主語が患者/被験者であれば、
Subjects are to visit the site every 3 months.(被験者は3ヵ月ごとに実施医療機関に来院する。)のようにvisitが「来院」で間違いないのですが、モニターが実施医療機関に訪れる場合は通例として「訪問」を用います。
単語1つの細かい訳し分けという小さな違いではありますが、こうしたことを一つ一つきちんとしていくことが、翻訳物全体の品質を左右するのでおろそかにはできません。翻訳を依頼するお客さんが訳文を見て、「この翻訳者(翻訳会社)は『分かってるな/分かっていないな』」と思うのは、意外とこうした些細な点だったりもします。
なお、モニターは、正式には臨床開発モニター、CRA(Clinical Research Associate)と呼ぶこともあり、治験の実施期間中に、各実施医療機関で適切に治験が行われているか確認したり、データを収集したりするために、治験のいろんな段階で実施医療機関を「訪問」します。代表的な訪問には以下のものがあります。
Site Initiation Visit:開始(時)訪問。それぞれの医療機関で治験業務を開始する際の訪問。
Interim Monitoring Visit:モニタリング訪問。今回の例文のように、治験期間中に定期的に行う訪問。
Study/Site Closure Visit:終了(時)訪問。医療機関単位で治験業務を終了する際の訪問。
なお、上記の日本語訳については、「業務で見る機会が多い」という水準のものなので、「定訳」とまでは考えずに参考程度に見てください。
今回の内容が、皆様の翻訳の際にお役に立てば幸いです。最後までお読みいただきありがとうございました。