翻訳クイズ#23
9月に入るというのに、まだまだ暑さが続きますね。
今年こそは会社近くの人気かき氷店に行こうと意気込んでいたのですが、行列を前にすると足が止まりまだ実現できていません。かき氷屋さんに訪れる日はいつ来るのでしょうか。
さて、次の血管内治療つながりの英日対訳文を読んで修正すべき点を見つけてください。
問題文
原文:Operators often find difficulties in crossing the lesion with a stent. Being a new catheter capable of deploying the stent across the lesion even in the case of tortuous vessels, ABC is an optimal option for stenters.
訳文:手技では、病変部にステントを通過させることが難しい場合が多い。新たなカテーテルは、血管が蛇行している場合でもステントを病変部に留置できることから、ABCはステント留置術を行う医師にとって最適な選択肢であるといえる。
解説
いかがでしょうか。修正箇所を絞りづらくするために、意図的に普段の120%くらいの意訳をしているので、そうした部分に引っ掛かった方もいるかもしれません。異論はあるかもしれませんが、問題として本来意図した修正箇所は以下の下線部です。
修正例:手技では、病変部にステントを通過させることが難しい場合が多い。ABCは、血管が蛇行している場合でもステントを病変部に留置できる新たなカテーテルであり、ステント留置術を行う医師にとって最適な選択肢であるといえる。
Beingで始まる節がABC(=内容からカテーテルの製品名と判断される)に係る分詞構文なのですが、冒頭の訳例はABCとa new stentを別のものとして翻訳しており、Because a new catheter being capable of…かBecause there are a new catheter which is capable ofくらいの英語に相当する内容となっていました。
ご自身で一から翻訳していたら間違えなかったかもしれないのに、ドンと出された訳文に引きずられてしまった方もいるのではないでしょうか。MTS社内でも、いただいた訳を大切にしつつ、引きずられ過ぎないようチェッカーに注意喚起をしています。
なお、現在分詞、過去分詞の分詞構文では接続詞が省略されているので、日本語に翻訳する際はそれを補う必要があります。チェックの仕事で訳文を見ていると、これを苦手としている方が少なくないようで、接続詞のニュアンスが訳に反映されていなかったり、誤って解釈されていたりすることがあります。残念ながら、どの接続詞が省略されているかは文法的に特定することはできず、文の内容を踏まえて適切に判断しなければなりません。
また、今回出てきた動詞cross、前置詞across、形容詞tortuousは、血管内治療やステントに関連する用語、表現として和訳でも英訳でも押さえておきたいです。
今回の内容が、皆様の翻訳の際にお役に立てば幸いです。ご覧いただきありがとうございました。
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