翻訳コーディネーターが依頼したくなる翻訳者って?

2023年10月16日翻訳会社の「中の人」

弊社は大手と比べると小規模な翻訳会社ではありますが、それでも700名を超えるたくさんの登録翻訳者さんがいます。とはいえ、正直なところ、継続依頼が出来ている翻訳者さんは全体の7~10%程度にとどまり、なかなかこの数字が増えないことが悩みです。翻訳会社としては一人でも多くの方に活躍してほしいという気持ちはあるものの、案件ごとの条件や依頼時のやり取りのしやすさにより、コーディネーターの依頼が集中する方は大体決まっています。

そこで今回は私が思う「翻訳コーディネーターが依頼したくなる翻訳者」についてお話しします。

翻訳品質が安定している

高品質な翻訳を提供してくれる方に依頼が集中するのは言うまでもありませんが、「いつ依頼しても、期待している水準で翻訳を納品してくれる」ということも大切です。コーディネーターが翻訳者さんを選ぶ際、「この方は、これくらいの品質で訳文を提出してくれるだろう」と想定して全体のコーディネーションをするからです。

「期待している水準」=「登録トライアル時の水準」です。トライアル時にどんなに良い評価であったとしても、あくまで翻訳会社への登録のための翻訳です。トライアルで高評価だった翻訳者さんが実務ではトライアル時を下回る評価が続き、依頼を控えるようになることはままあります。

翻訳会社として、クライアントへ提出する翻訳物は常に一定以上の品質を確保する必要があり、品質が安定しない翻訳者さんへの依頼はしづらいものです。一方でいつも期待通りの品質で納品してくれる翻訳者さんは、安心して依頼できる方としてすぐに定着していきます。

稼働状況がわかり易い

翻訳者さんの多くは複数の翻訳会社とお取引していると思います。もちろん自社からの依頼状況は管理・把握していますが、他社案件の予定までは把握出来ないため公開スケジュールで空き状況を共有してくれる翻訳者さんは有り難い存在です。

コーディネーターが打診前に空き状況を確認できれば、無駄な連絡を省くことが出来ます。また翻訳者さんにとっては、予定の空きを開示することで営業的なアピールにもなると思います。普段からお付き合いのある翻訳者さんの予定に空きがあることが分かれば、コーディネーターは「何か依頼できる案件はあるかな」と考え、優先的に相談するはずです。 「公開スケジュールはちょっと…」という方は、稼働している曜日や時間をメール署名欄に入れておくだけでも有効です。コーディネーターが「いつ連絡しても断られる」「なかなか連絡がつかない」と感じると打診の優先度が低くなるので、効率的に連絡が取れるようにしておくと良いと思います。

問い合わせに対するレスポンスが早い

コーディネーターは複数の案件を同時進行で迅速に手配する必要があるため、問い合わせに対するレスポンスの早い翻訳者さんを好む傾向にあります。

コーディネーターの頭の中には「レスポンスの早い翻訳者さんリスト」があり、特に急いで翻訳者さんの予定を確保したい場合はこのリストから優先的に声を掛けます。たとえ翻訳者さんの回答がお断りであったとしても、すぐ次の翻訳者さんへ打診が出来るので素早い回答はとても助かります。

無理がない

登録間もない翻訳者さんであるほど、コーディネーターはその翻訳者さんの守備範囲を超えた内容の翻訳案件を打診してしまうことがあります。翻訳者さんの中には「断ったら次がないかも」と心配し、少々無理をしても引き受けようとしてくださるのですが、品質が保持できないと思われる場合は無理に引き受けない方が良いです。むしろ「この分野は経験がなく(苦手としており)、お断りさせてください」とはっきりご申告頂いたほうがその方の得意不得意が明確になり今後の相談がしやすくなりますし、その方の翻訳物に対する責任感がうかがえ良い印象が残ります。「断ったら次がないかも」というリスクより、「無理して引き受けたけど、品質を落としてその後の依頼が無くなった」というリスクの方が高いです。

翻訳の品質を確保するためにも、責任感があり安心してお仕事をお任せできる翻訳者さんはコーディネーターにとって依頼する優先度が高くなります。

おわりに

どの翻訳会社にもコーディネーターが好んで依頼する翻訳者像があり、当てはまる方から依頼が定着していくのではないかと思います。今回は弊社で好まれる傾向としていくつか紹介させていただきました。現役翻訳者の皆さんはお仕事獲得のヒント、翻訳学習中の皆さんは翻訳会社スタッフの考えを知るきっかけとなれば幸いです。 最後までお読みいただきありがとうございました。