用語集作成のススメ

医療翻訳情報

翻訳者の皆さん、翻訳勉強中の皆さん、翻訳作業中に「あれ?この単語って前も見たな」とか、「この用語は確か、定訳があったなぁ」と思うことありませんか?実務翻訳は、メディカル・トランスレーション・サービスが専門とする医療のほか、IT、法律、特許、金融などに分野が分かれています。そして、各分野で独特の用語や表現が存在し、往々にして自分のボキャブラリーの中にはなかったり、通常の辞書には載っていなかったりします。そこでおススメなのが、自分独自のカスタム用語集を作ることです。何度も同じような調べ物をする手間が省けるうえ、用語集を作成するという作業自体を通じて用語が記憶に定着することも期待できます。

どんな用語集がよいか

簡単に作れて、簡単に使えるので、Excelが良いかと思います。検索機能も使えますし、そのまま翻訳支援ツール(CATツール)に組み込むことも可能です。また、Excelはシートを複数作成できます。シートごとにカテゴリー分けすると良いでしょう。例えば医療分野では、「一般」「医薬品」「医療機器」「非臨床」「臨床」「薬事申請関連」等のカテゴリーが考えられます。シートを分けた場合、全体を検索する際はオプションから「検索場所」を「シート」ではなく「ブック」に変更する必要がある点に注意してください。

どのような項目を設けるか

作成の手間をなるべく減らす意味でもシンプルイズベストです。以下のような項目で用語集を構成すると良いと思います。(特にCATツールに組み込むことを想定する場合、CATツールに入れられるのは「原文言語」「訳文言語」「コメント」のみです。)

  • 原文言語:単語だけでなく、複数の単語からなる用語ももちろんOKです
  • 訳文言語:書き方は自由です。私は自信がない場合、一旦「?」をつけて用語集に入れたりしています。後々翻訳経験を積んでいくことで、「?」が取れたりします。
  • 備考:その用語に関することなんでも記入しておくといいでしょう。その用語の意味、内容、覚えておきたい情報、フォント(例:「ラテン語由来なので通常斜体とする」)等々。
  • 根拠としたURL・場所:多くの場合、ウェブ上で検索することが多い昨今です。根拠としたURLを記載しておけば、何度でもそのウェブページを開いて確認することができます。

どのような用語を用語集に入れればよいか

  • 繰り返し辞書で引いたり、ウェブで調べたりした用語:「あれ?この用語は前も調べたな」と思ったら用語集に入れましょう。何度も調べる=頻出用語です。
  • 辞書に載っていない用語:各分野で独特の用語は一般的な辞書に載ってないことがあります。そうした用語は迷わず用語集に入れましょう。チャンスを逃すと、次回もまた「辞書に載ってない!困った!」となります。
  • 複数の意味がある用語のなかで、辞書の最後の方に出てくる意味を採用した用語:辞書を引くと、つい最初の方に出てくる訳語を使いたくなってしまいます。でも実は後の方に出てくる意味を使うことが正解ということも少なからずあります、そんな時も、その訳語を用語集に入れておきましょう。【例】The report is circulated to the relevant functions.⇒「辞書でfunctionの一番上の訳語は『機能』だけど、この場合は後ろの方の『役職、部門』か!」
  • 誰かがうまい翻訳をしているのを見かけたとき:校正作業をしていると、「こういう訳し方があるのかぁ」という光った翻訳を見かけるときがあります。また、翻訳学校で隣の席の人が発表した訳文に、自分が思いつかないような訳語を見つけることもあるかもしれません。そんな時はすかさずメモして、用語集に入れましょう。自分なりのボキャブラリーが構築できます。

リンク集も入れてみましょう

用語集のシートの1つをウェブのリンク集にするのもおススメです。

例えば、ISO●●●規格に準じた試験レポートの翻訳するときに参照すべきそのISO規格のウェブページ、医薬品の添付文書を翻訳するときに参照する医薬品医療機器総合機構(PMDA)の添付文書/米国食品医薬品局(FDA)のPackage Insertを収載したページ、コモン・テクニカル・ドキュメント(CTD)の作成ガイドラインのウェブページなど、調査でたどり着いたウェブページのリンクをまとめておきます。次回からはそのリンクをクリックするだけです!

おわりに

今回は私(日英・医療分野)の用語集の作成方法をご紹介させていただきました。あくまで私のやり方なので、皆さんがお持ちのスキルやPCに入っているソフトを利用して色々と変更やカスタマイズ可能です。皆さんが使いやすい自分だけの用語集を作ってみてください!

少しでも皆さんのお役に立てればうれしいです。最後までお読みいただきありがとうございました。