Protocol、正しく訳せていますか?

医療翻訳用語の基礎

Protocolといえば、治験の場合は「治験実施計画書」、非臨床試験であれば「試験計画書(プロトコール)」として訳すことが多いですが、文字どおり「計画書」の趣旨で処理すると不自然な訳になる場合があります。
 
早速ですが以下の例文をご覧ください。

英文

MtsTransfer is a web-based portal for study sites to submit study data to MTS.
Upon logging into MtsTransfer, the user will see the protocol in the upper right corner of their screen.
If the user is on multiple protocols, they will need to select the applicable protocol from the drop-down menu.

訳文

MtsTransferは、治験実施医療機関が試験データをMTS社に提出するためのウェブベースのポータルである。
MtsTransferへのログイン後、画面の右上に治験実施計画書が表示される。
ユーザーが複数の治験実施計画書に参加している場合、ドロップダウンメニューから該当する治験実施計画書を選択する必要がある。

上の訳文では、protocolがすべて「治験実施計画書」と訳されていますが、いずれも「治験実施計画書」では原文の趣旨に沿った訳になっているとは言えません。
特に、「治験実施計画書に参加している」という表現は日本語としても不自然です。

また、“the user will see the protocol in the upper right corner of their screen”の箇所も、画面の右上に治験実施計画書の縮小版が表示されるのであれば「画面の右上に治験実施計画書が表示される」という訳で問題ありませんが、実際に表示されるのは試験名(治験実施計画書の番号)であることが推察されます。
 
このような場合、protocolは「計画書」ではなく「(計画書に記載の)試験」を指しているものと解釈して訳語を選択する必要があります。

修正例

MtsTransferは、治験実施医療機関が試験データをMTS社に提出するためのウェブベースのポータルである。
MtsTransferへのログイン後、画面の右上に試験名が表示される。
ユーザーが複数の試験に参加している場合、ドロップダウンメニューから該当する試験を選択する必要がある。

例文のように、protocolがstudyの言い換えとして使用されている場面はよくあります。
Protocol=計画書で意味が通らない場合は、「試験」を指していないか検討してみてください。
 
最後までお読みいただき有難うございました。

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