翻訳クイズ26

2026年2月23日医療翻訳クイズ

美容室の前に置かれた手書きの黒板に、

カット
ノンズ
営業中!

と書いてあったので、さては「メンズ」の書き損じか、と看板を確認したところ、Non’s(ノンズ)というお店でした。文字情報から誤りを見つけようとしてしまうのは職業病ですが、疑って見過ぎるのは良くないなと反省しました。

さて、次の訳文(英日)から、修正すべき点を見つけてください。

問題文

原文:Despite the availability of safe and effective treatments, this disease remains an area of unmet need due to poor adherence. The current clinical trial aims to address this gap by comparing a novel once-daily oral treatment against standard-of-care therapy.
 
訳文:安全かつ有効な治療薬が存在するにもかかわらず、アドヒアランス不良のため、本疾患にはアンメットニーズが残されている。現在の治験では、1日1回経口投与の新たな治療薬を標準治療と比較し、このギャップを解消することが目指されている。

解説

いかがでしょうか。修正してほしかった点は以下のとおりです。

修正例:安全かつ有効な治療薬が存在するにもかかわらず、アドヒアランス不良のため、本疾患にはアンメットニーズが残されている。治験では、1日1回経口投与の新たな治療薬を標準治療と比較し、このギャップを解消することが目指されている。

形容詞currentは「現在の、最新の」という意味でなじみのある方が多いのではないかと思いますが、「現在の治験」とすると、今日行われている治験全般を広く指す言葉になってしまいます。原文がthe clinical trialと単数形であることからも明らかなように、これは正しい解釈・訳語ではありません。

この場合のcurrent clinical trialの意味を、上記の語義に沿って説明するのであれば「今現在話題にしているところの治験」、すなわち「この治験、本治験」ということです。日本語ではthisやtheと訳に差が出ませんが、同じ言葉の繰返しを避けたり、より具体的に対象に言及したり、ちょっと固めの表現にしてみたりといった理由から、英語ではこのcurrentが用いられることがあります。形容詞presentも同じように用いられます。

例文:To the best of our knowledge, the present work represents the first attempt to provide comprehensive insights into this difficult-to-treat disease.
(著者らの知るかぎりにおいて、本研究は、この治療困難な疾患に関する包括的な知見を初めて紹介したものである。)

メジャーな語義につられて本来の意味を取り損なうというのは、翻訳でよくある誤りのパターンの一つです。今回のtrialが単数形であったような文法面と、「この前後関係であれば、これは『この試験』のことでは?」といった文脈・内容面の両方の違和感に注意して、こうした誤りが生じないよう注意しましょう。

今回の内容が、皆様の翻訳の際にお役に立てば幸いです。ご覧いただきありがとうございました。

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