MedDRAとは~実践編~
前回は導入編として、MedRAの概要をご紹介いたしましたが、今回は実践用として、検索方法から用語選択まで詳しくお話しします。
MedDRA/Jの検索方法
前回MedDRAの概要お伝えしましたが、実用編としてMedDRA/Jを使った検索と用語選択の手順を解説します。
実際に翻訳する文書(日⇔英)に有害事象名が出てきたら、基本的には文書に記載されたバージョンを使用します。CIOMSフォームなどの副作用報告では、最新のバージョンを使用します。バージョンが不明の場合は、翻訳会社に聞いてくださいね。
最新版と1つ前のバージョンはJMOの会員であれば、オンラインの検索ツールで利用可能です。
ここからはちょっと実践的なお話
次に実際にMedDRA/Jを使用する際に必要な内容をご紹介します。
これは、現在お仕事でMedDRAを使用している方向けの記事ですので、初めて名前を聞いた方や、現時点では使用する予定がない方はこの項目は飛ばして、「おわりに」に進んでください。導入編の記事もありますので、そちらもぜひご参照ください。
カレンシー
ここからは、MedDRAでLLT(Lowest Level Term:MedRAのもっとも詳細なレベルの用語)を選択する際に必要な情報です。翻訳時は以下のカレンシーに従ってください。
英語カレンシー
MedDRAの英語用語のすべてのLLTには「Y」(カレント用語)または「N」(ノンカレント用語)というステータスが付いています。
● Y(カレント用語):現在使用すべき用語。
● N(ノンカレント用語):曖昧、不完全、または古い用語で、現在では使用しない。ただし過去データ検索・集約のため収載されている。
したがって、翻訳時はカレント用語を使用してください。
なお、オンライン「MedDRA/J検索ツール」では、カレンシーステータスが色で区別されます。色分けの意味はトップページに記載されています。
日本語カレンシーと日本語シノニム
「日本語カレンシー」と「日本語シノニム」は英語版にはないMedDRA/J特有の概念です。日本語版と英語版は基本的には同一となっていますが、言語上、英語と日本語は1:1ではありません。そのため、日本語カレンシーや日本語シノニムのような工夫がされており、これを翻訳の際の用語選択時に考慮する必要があります。
日本語カレンシー
● 英語の複数のLLTが、1つの日本語用語に対応している場合があります。
● その中で、日本語カレンシーが 「Y」 のものを使用します。
「N」は過去の用語や非推奨用語なので使いません。
例:PT「腹部膨満(Abdominal distension)」
「Abdominal distension」=腹部膨満Y
「Abdominal fullness」=腹部膨満N
その他「Distended abdomen」「Distention」などもすべて「腹部膨満」と意味しますが、日本語カレンシーは「N」であり使用するのは「Abdominal distension」のみです。
日本語シノニム
● 複数の日本語用語が、同じ英語LLTに対応している場合を指します。
● シノニムには 「S」 が付き、8桁のコードは「9」で始まります。
● 基本的にシノニムは使わず、それに対応する 正規のLLT日本語用語 を使います。
例1意味が同じ語:
「しゃっくり(S)」と「吃逆(LLT日本語)」→英語「Hiccups」
「むくみ(S)」と「浮腫(LLT日本語)」→英語「Oedema」
例2表記の違い:
「ガンマグロブリン血症(S)」と「γグロブリン血症」(LLT日本語)」→英語「Gamma globulinaemia」
「鬱病(S)」と「うつ病(LLT日本語)」→英語「Depression」
おわりに
最後までお読みいただきありがとうございました。
余談ですが、MedDRAの英語表記はイギリスつづり([例:浮腫oedema、貧血anaemia]と米国式(edema、anemia)と異なるため、英訳では、MedDRA準拠かどうかが一目で分かってしまいます。翻訳対象文書でMedDRA準拠の場合、事前バージョン情報をお伝えしたり、該当するバージョンの用語集をお渡ししたりする必要があります。
次回は少し翻訳から離れて、通訳についてご紹介したいと思います。実はMTSでは通訳業務も取り扱っているのです。
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