上書き翻訳時のお役立ち情報(変更履歴の表示方法)
翻訳者の皆さまが日々取り組む案件のなかには、クライアントから提供されたWordファイルに直接上書きして翻訳する作業がしばしば発生するかと思います。
その際に役立つ作業方法やテクニックをご紹介させていただきます。
改訂案件は高需要
MTSでクライアントから高頻度で受注する案件に「改訂案件」というものがあります。
文書全体を翻訳するのではなく、「文書の一部(改訂された箇所のみ)を翻訳する」というお仕事です。文書の種類としては、代表的な治験関連文書である、治験実施計画書や治験薬概要書から、同意説明文書、医療機器のマニュアル、治験ニュースレターなど多岐にわたります。
MTSでは2日に1度は受注する非常にメジャーな案件です。
その案件の代表的な作業方法として挙げられるのが、旧版の翻訳済みWordファイルを直接編集して改訂箇所を反映させていく「改訂上書き翻訳」という手法です。
今回は改訂案件にフォーカスして、作業に取り組む際に役立つ情報をご紹介させていただきます。
改訂案件では変更履歴を付ける
改訂案件の場合、クライアントからMTSに「改訂箇所に変更履歴をつけて納品してほしい」と指示があることがほとんどです。旧版から新版で改訂が発生した箇所と、旧版から改訂が無い箇所を区別するのが目的です。そのため翻訳者様には変更履歴をつけながらの作業をお願いしています。
下画像の通り、Wordの「校閲」タブの「変更履歴」にある「変更履歴の記録」をオンにすれば、文章を編集した履歴を付けることができます。文章を編集すると、編集箇所の左の余白外に赤い縦線が現れます。そちらをクリックすると、変更履歴が表示され、どのように文章を変更したのか確認することができます。(変更履歴を表示させると、赤い縦線は灰色になります。)

下画像では、「目指します」が「目指していきます」に変更されたことが分かりますね。

おすすめの履歴表示方法
改訂量が多く、変更履歴がたくさんついた文書を作成した際、履歴が多すぎて文書が見づらくなったことはありませんか?
実は履歴の表示方法にはいくつか種類があります。
見やすい履歴表示にすることで、どこで何が削除され、何が追加されたかを確認しやすくなります。
ここでは一番分かりやすい履歴表示設定をご紹介したいと思います。
下画像の通り、「校閲」タブの「校正履歴」の「変更履歴とコメントの表示」内の設定を編集することで、履歴の表示方法を変えることが可能です。

「変更履歴とコメントの表示」で「吹き出し」をクリックしてください。

「書式のみ吹き出しに表示」にチェックを入れます。
「吹き出し」とは、文書の左側に示された履歴のことを示します。

上の画像は「書式のみ吹き出しに表示」にチェックを入れ、「目指していきます」を太字にした際の履歴表示です。
このように、文字の挿入と削除は本文中に表示し、太字の有り無しや文字色の変更などを文書外に表示させると、ぱっと見たときにどのように改訂が行われたか理解しやすくなります。
履歴表示には実は落とし穴が!
「吹き出し」設定は、ほかに「すべての変更履歴を本文中に表示」と「変更履歴を吹き出しに表示」にすることもできますが、改訂翻訳をする上では少し気をつけなければならない点があります。
「すべての変更履歴を本文中に表示」にした場合、吹き出しがなくなり、文書を見ただけでは太字などの書式変更履歴を確認することができなくなってしまうので、注意が必要です。
「変更履歴を吹き出しに表示」にした場合、削除履歴が吹き出しに表示されるようになります。
前述の例文にさらに改訂を加え、「書式のみ吹き出しに表示」と「変更履歴を吹き出しに表示」の画像を下に提示してみます。
軽微な改訂なら問題ないかもしれませんが、「変更履歴を吹き出しに表示」では、改訂箇所が多いと文章の「どこ」で「何」を削除したのか、ぱっと見では少しわかりづらいことが多いです。
「書式のみ吹き出しに表示」

「変更履歴を吹き出しに表示」

また、変更履歴の表示方法によって、分量の増減があることも留意しなければなりません。
こちらは画像3枚を削除した際の履歴です。
「変更履歴を吹き出しに表示」

「書式のみ吹き出しに表示」

「変更履歴を吹き出しに表示」は画像の削除履歴が吹き出しに表示されるため、履歴を表示した場合、「書式のみ吹き出しに表示」よりも分量が少なくなります。
コーディネーターとのやりとりで、指摘したい箇所の該当ページがうまく伝わらないといった経験をお持ちの翻訳者様もおられるかもしれません。コーディネーター側と翻訳者様側で変更履歴の表示方法が異なることが原因である場合があるので、そんな時は前述の例を思い出していただけると解決できるのではないかと思います。
皆さまの翻訳時の作業効率化に少しでもお役に立てれば幸いです。
最後までお読みいただきありがとうございました!
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