今、翻訳者に求められるITスキル
どの業界・職種でもITスキルが求められる場面が年々増えてきていますが、翻訳業界も例外ではありません。現在ではCATツールやAIを活用した翻訳が当たり前となり、クライアントから「このシステムやツールを使用して業務を進めてほしい」と相談いただくケースが増えました。もはや案件獲得のためにもITとの関わりは避けて通れず、最新の動向を把握し、常に情報をアップデートしていくことが求められています。
そこで今回は、「今、翻訳者にどのようなITスキルが求められているのか」について、弊社の事例を交えてご紹介します。
Word/Excel/PowerPointなどのOffice系ツールの操作
Wordの変更履歴を残す改定(差分)翻訳
Word形式の改定翻訳(差分翻訳)は以前からありますが、ここ数年で依頼数がさらに増加している印象です。特に治験関連の文書(IB、Protocol、ICFなど)は文書改定が何度も生じたり、テンプレートからの差分のみ翻訳するという場面も多くあります。多くの場合はクライアントから「(過去の版やテンプレートからの)差分がわかるよう、変更履歴を付けてください」という指示があります。このような場合、翻訳作業は単なる上書きではなく、既存文書に対する加筆・修正といった「翻訳+データ編集作業」が必要であり、Wordを駆使した編集作業が可能なスキルが求められます。弊社では、翻訳後に別の担当者がレイアウト調整を行う体制となっているため、翻訳時に高度なレイアウト作成まで求めることはありません。ただしある程度の書式設定やレイアウト調整に対応できる知識や操作スキルは必要です。
CATツールでの翻訳
以前はクライアントからCATをツールでの翻訳を指定されるというよりは、過去の翻訳データを活用するため弊社が独自に使用する場面が多くありました。しかし近頃ではクライアント側で蓄積した翻訳データを含む翻訳メモリが提供され、指定のCATツールを使用しながら翻訳するスタイルが増えてきています。クライアントによって指定されるCATツールも異なり、それぞれのツールに応じた操作スキルや設定対応が求められます。こうした背景から、翻訳者側にも複数のCATツールに精通していることや、各クライアントのスタイルガイドや用語集に柔軟に対応できる運用力が一層重要になっています。
QAツールの使用経験
翻訳後にクライアントの指定するQAツールを使ってエラーの有無を機械的に検出・修正する工程が求められることがあります。この場合、作業者は翻訳物と一緒にQAチェックを実施した証拠となる「チェックリスト」の提出も必須となります。操作には多少の慣れが必要かもしれませんが、QAツールではタグの欠落、数値の不一致、用語の不統一、文末句の整合性など、人間の目だけでは見逃されやすいエラーも自動検出されるので、より正確で一貫性のある翻訳品質を担保することができます。
おわりに
ITスキルが高い方はどんなツールにも柔軟に対応してくださる適応力があります。私たちコーディネーターも、新しいシステムやツールの導入には戸惑うことが多々ありますが、それでも快く協力してくださる翻訳者・校正者の皆さまのおかげで、日々の業務を円滑に進めることができています。翻訳の質が高いことはもちろん大前提ですが、現在ではそれに加えて、ツールや環境に対応できるスキル、そして変化に前向きに取り組む姿勢も大きな強みになると実感しています。今後ますますIT化が進む中で、こうしたスキルも磨きつつ、より良い翻訳サービスを提供していければと思います。引き続きご協力のほど、よろしくお願いいたします。
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