翻訳物の最終的な責任はだれなのか? ~翻訳コーディネーターが体験したびっくり話~

医療翻訳情報

蒸し暑く長かった夏も、いつの間にか終わってしまいましたね。
今回のテーマは、「翻訳物についてのクライアントさんとの認識の違いにびっくりした話」です。
もちろん今回のケースはまれですので、『こんなこともあるんだな~』程度の気持ちで読んでいただけると嬉しいです。

凄すぎる能力を持ったクライアントさん

弊社のクライアントさんは、良識があり礼儀正しい方が多いです。たとえ納品物に不備があってそれがクレームに繋がったとしても(非常にまれです)、丁寧な態度を崩す方はいません。
私(翻訳コーディネーター)が担当したクライアントさんも親しみやすく丁寧な方でしたが、「納品物のスペルミス(誤植)を見つける能力」がとんでもなく優れており、「納品物にスペルミスがある」とのご指摘を頂きました。
翻訳はボリュームが増えるとそれにともなってミスが発生する可能性が高まります。もちろん訳抜けやスペルミスを限りなくゼロにするために、細心の注意を払って何段階ものチェックを行いますが、大ボリュームの翻訳成果物の中でのわずかなスペルミスがクライアントさんの目に留まると、何とも言えずやるせない気持ちになることがあります。

ご指摘後の緊張のミーティング

そんな折、そのクライアントさんから「品質向上のためのミーティング」が提案されました。これは『お叱りを受けるのだろうな』、と私は覚悟を決めましたが、意外にもクライアントさんからの厳しいお言葉はなく、我々のワークフローや改善策について丁寧な質疑応答を行いました。
ただ、翻訳者や校正者の役割を説明しているところで、どうも話がかみ合っていないような違和感があり、思いもよらない一言を投げかけられ、我々は頭は真っ白に?いや真っ青になりました。

クライアントさんから想定外のひとこと

「校正者のバックグラウンドを教えて下さい。きちんと翻訳者を監督できるような力量があるレビュアーだということを確認したいです。翻訳の最終的な責任は校正者にありますから。」とおっしゃるクライアントさん。
 
校正者が翻訳者を監督?
最終的な責任?
 
私のコーディネーター人生において、これは初耳でした。なぜなら、翻訳者になりたい人はまず校正者として下積みをし、良い翻訳に触れながら経験を積むことでステップアップできるというのが常識だと考えていたからです。
しかし、クライアントさんの意見は真逆で「校正者とは、翻訳者よりも知識や経験に富むベテランである」という認識です。
私にはそれをうまく取り繕うほどの余裕はなかったので、クライアントさんには正直に認識の違いがあったことをお伝えしました。

おわりに

念のためですが、MTSでは校正者が翻訳者を監督して責任を負うというようなルールはありません。
もちろん、これは一部のお客様のお話であり我々翻訳コーディネーターがきちんとクライアントさんのリクエストに対してすり合わせをしておけばこのような認識のずれはありませんでした。
しかし、翻訳会社側の人間が持つ常識と、クライアントさんが持つ常識とは、それぞれ異なるのだなと感じる一幕でした。
翻訳者、校正者、どちらも大切な役割を担っていただいていますが、ところ変われば求められる資質や責任が変わるものなのだと思います。
MTSでは、良い翻訳かどうかの責任は翻訳会社が負うものですが、翻訳者、校正者の皆さんのご協力あってのものですので、どうぞこれからもよろしくお願いします。

この記事が参考になれば嬉しいです。お読みいただきありがとうございました。

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