使い方色々!動詞 “include”

医療翻訳用語の基礎

ある程度まとまった長さの文章では、All study sites including those in Japan will be closed.(日本を含めたすべての実施医療機関で試験を終了する。)のように、include/includingが非常によく用いられます。

英語を勉強したことのある方であればこの単語の意味が「含む」であることは言うまでもなく、辞書でも第一義として「含む」、「含める」が記載されています。

そのためか、翻訳者さんから納品いただいた訳文をみると、多くの場面でincludeに「含む」の訳語があてられています。趣旨を加味した上で自然な日本語として「含む」と訳されていれば問題ないのですが、とりあえずこれをあてておけばよい、という感じで「含む」が選択されていることも、実際の訳文では珍しくありません。

このように、おざなりに「含む」と訳されることが少なからずあるincludeですが、全体の構成要素の一部を指して「〜を含む」という趣旨で使用される場合だけでなく、代表例を示す趣旨、構成要素をすべて挙げる趣旨で使用されることもあり、訳す際には注意が必要です。

次の例文をみてください。

Our store sells fruits including orange, apple, and grape.

これを「当店ではオレンジ、リンゴ及びブドウを含む果物を販売しています」とすると、いかにも直訳調で不自然に感じます(販売している果物にオレンジとリンゴとブドウは含まれているので完全に誤訳というわけではありませんが)。これは、例文中のincludingが全体の構成要素の一部ではなく、代表例を示す趣旨で使用されているためです。この場合、includingに「など」、「はじめとする」といった訳語をあて、「当店ではオレンジ、リンゴ及びブドウなどの果物を販売しています」とすると、自然に読める訳文になります。

また、

Our main clients include Company A, Company B, and Company C.

のようにincludeが構成要素をすべて挙げる趣旨で使用されている場合は、「当社の主要な顧客は、A社、B社及びC社です」と訳すことができます。

実際に翻訳している英文中で、includeがどのような趣旨で使用されているかを明確に区別することは難しいこともありますし、適切な訳語も上記の説明に収まるものではありませんが、includeを見たら機械的に「含む」に置き換えてしまうのではなく、どのような訳語を用いるべきか、一度立ち止まって検討してみるとよいかもしれません。

最後までお読みいただきありがとうございました。