文書でよく見る検査名、イメージできますか?知ると訳しやすくなるメディカル英語
メディカル文書で頻繁に目にする検査や処置名は、単語の意味を知っているだけでは十分とは言えません。検査がどのような目的で行われ、どのような手順で行われるのかをイメージできると、前後の文脈が理解しやすくなり、訳語の選択にも自信が持てるようになります。今回の記事では、治験文書や症例報告でよく見かけ、内容を知っておくことで翻訳に役立つ検査や処置を取り上げました。
1. ECG(electrocardiogram)「心電図、心電図検査」
〈検査の目的〉
不整脈や心疾患が疑われる患者さんに、心臓の電気的な活動を調べるために行われます。動悸、胸痛、息切れ、めまいなどの症状がある場合のほか、心疾患のスクリーニングや、治療前後の心臓の状態の評価などを目的として実施されることもあります。
〈例文〉
An ECG was performed to evaluate the patient’s cardiac function.
(患者の心機能を評価するため、心電図検査を実施した。)
〈関連用語〉12誘導心電図(12-lead ECG)
最も一般的に用いられる心電図の検査法です。両手足と胸部に電極をつけ、心臓の電気信号を12種類の誘導(波形)として記録します。心筋梗塞や狭心症などが生じている部位や、不整脈の種類がわかるほか、心臓の筋肉の厚さ(心肥大)や電解質異常を疑う所見をとらえることもできます。
2. MRI(magnetic resonance imaging)「磁気共鳴画像法、MRI検査」
〈検査の目的〉
脳や脊髄、関節や筋肉、腹部や骨盤、心臓や血管などの異常が疑われる患者さんに、体の内部を詳しく調べるために行われます。特に、脳腫瘍や脳梗塞、脊椎・関節の病変など、X線を用いるCTとは異なる情報を得たい場合に用いられます。MRIでは、磁場と電波を利用して体内の詳細な画像を撮影します。
〈例文〉
Contrast-enhanced MRI was performed to evaluate the lesion.
(病変を評価するため、造影MRI検査を実施した。)
〈関連用語〉造影剤(contrast agent/contrast media)
MRIは造影剤を使用せずに撮影することもできますが、病変をより明瞭に描出したり、病変の性状を詳しく評価したりする目的で、造影剤を静脈注射して撮影することがあります。
3. bronchoscopy「気管支鏡検査」
〈検査の目的〉
肺がんやその他の肺疾患が疑われる患者さんに、胸部X線やCT検査で異常が認められた場合などに、その原因を詳しく調べるために行われます。また、原因不明で長引く咳や喀血、息切れなどの呼吸器症状の原因を調べる目的で実施されることもあります。
〈例文〉
The patient underwent a bronchoscopy to find the cause of the chronic cough.
(患者は慢性の咳の原因を突き止めるために気管支鏡検査を受けた。)
〈関連用語〉生検(biopsy)
気管支鏡検査では、組織の一部を採取して調べる生検を伴うことがあります。
4. lumbar puncture「腰椎穿刺」
〈検査の目的〉
中枢神経の感染症が疑われる患者さんに対して、髄膜炎や脳炎などの診断を目的に実施します。高熱、激しい頭痛、項部硬直などの症状がみられる場合に、脳脊髄液(CSF)を採取し、感染症の有無などを調べます。また、くも膜下出血が疑われる患者さんで、CT検査で明らかな出血が確認できない場合にも、脳脊髄液を採取して出血の有無を調べる目的で実施されることがあります。
〈例文〉
A lumbar puncture is carried out by inserting a needle between the vertebrae in the lower back.
(腰椎穿刺は、腰の部分の脊椎の間に針を刺して行います。)
〈関連用語〉脳脊髄液(cerebrospinal fluid、CSF)
腰椎穿刺では、脳や脊髄を満たしている脳脊髄液(CSF)を採取し、感染症や出血などの有無を調べます。
| +α 「イメージできる」と、訳語の選び方が変わります たとえばECGは、心臓の電気的な活動を記録するという「行為」と、記録された「心電図」そのものの両方を指します。検査の中身をイメージできていると、この違いに気づけます。 ・An ECG was performed. → 行為なので「心電図検査を実施した」 ・The ECG showed sinus bradycardia. → 記録なので「心電図では洞性徐脈が認められた」 同じように、bronchoscopyは「気管支鏡検査(行為)」、bronchoscopeは「気管支鏡(器具)」です。語尾の-scopyと-scopeで指すものが変わります。 検査の中身が頭に入っていれば、こうした判断を辞書に頼らず自分で下せるようになります。 |
おわりに:検査の中身を知ることが、訳語選びの根拠になる
検査や処置の名称は、メディカル文書では頻繁に登場する一方で、実際の検査や手順を目にする機会がなければ、具体的なイメージを持つのが難しいものです。だからこそ、名称だけでなく、「どのような患者さんに、何を目的として、どのように行われるのか」まで知っておくことが、文書を理解するうえで役立ちます。
今回取り上げた検査・処置が、今後の翻訳で出てきたときの理解の助けになれば幸いです。検査や処置の名称を見かけたら、その内容を思い浮かべながら前後の文脈を読んでみると、新たな発見があるかもしれません。
とはいえ、メディカル文書に登場する検査・処置は、今回の4つにとどまりません。ひとつずつ調べていく作業はそれ自体が学びである一方、独学では「どこまで踏み込めば訳文に反映できるのか」の見きわめが難しく、時間だけがかかってしまうこともあります。
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