クライアント・翻訳者様との信頼関係

2023年10月16日翻訳会社の「中の人」

企業で発生する翻訳は、クライアントが翻訳会社に案件を発注し、翻訳会社はフリーランスの翻訳者様にお仕事を依頼する流れが一般的ですが、今回は翻訳会社にとって非常に重要な「クライアント・翻訳者様との信頼関係」というテーマで情報を発信させていただきます。 翻訳者を目指す方はもちろん、現役の翻訳者様にとってもお役に立つ内容となれば嬉しく思いますので、是非最後までお読みいただければ幸いです。

どんな仕事を受注しているの?

弊社はメディカル専門の翻訳会社として20年以上の実績がありますが、クライアントの9割以上は医薬品企業様と医療機器メーカー様です。

医薬品企業様であれば治験薬概要書(IB)、治験実施計画書(プロトコール)、症例報告、CTDなどの案件を多く頂きます。

医療機器メーカー様であれば試験レポート、生物学的安全性試験、取扱説明書(IFU)、不具合報告などが主な案件です。

また、医薬品企業様・医療機器メーカー様に共通して多くご依頼頂く案件としては、文献、機構相談、照会事項、添付文書、契約書などがあります。

畜産系文書、動物向けの医薬品、化粧品のファクトシート、食品添加物分析書といった案件もまれに発生します。

クライアントの納期って厳しいの?

お客様からの様々な案件と日々向き合っていますが、日程に余裕のある案件よりも短納期案件の方が圧倒的に多いです。

納期が厳しい代表的な案件としては「照会事項」が挙げられます。

弊社のメインクライアントである医薬品企業様や医療機器メーカー様は新薬・新機器の承認申請のために審査当局(PMDA)に資料を提出しますが、その際にPMDAから照会事項という質問文書が送られてきます。

申請者は回答を作成してPMDAへ文書を提出しなければなりませんが、この期間が非常に短く、長くても2週間程度の猶予しか与えられません。

外資系企業の場合は海外の本社からのサポートや承認を得る必要があるため、

  1. 照会事項の英訳作成
  2. 海外本社へ送付
  3. 本社から入手した回答の和訳作成

といったような作業が必要になります。

その後も様々な作業が発生しますが、翻訳発注の担当者はこの過程で翻訳会社に英訳・和訳を外注することが多いです。

このスケジュールが遅れると後の新薬・新機器の上市に多大な影響を及ぼすため、担当者は申請過程で発生する様々な作業を加味してスケジュールを組みます。

しかし、PMDAからの入稿遅延や、海外本社から回答が来ないといった事態で、スケジュールは二転三転することが日常茶飯事です。

いかに信頼を得られるか

このような事態にいかに柔軟に対応してお客様の希望に応えられるかが翻訳会社の力の見せ所です。

クライアントから具体的な翻訳ボリュームや入稿日程などをヒアリングし、翻訳者様へお仕事を依頼して詳細な社内スケジュールを決定します。

ご経験がある方もいらっしゃるかもしれませんが、照会事項案件は本当にスケジュール変更が多く、弊社が請け負う案件の中では手配の難易度が高い部類に入ります。

しかし、この案件にうまく対応できた時にお客様から得られる信頼は絶大です。

「あの時柔軟に対応してくれたから、同僚にもこの会社を宣伝してみようかな」

「この後に発生する翻訳も引き続きこの会社に頼んでみようかな」

そしてこの考えは翻訳会社が翻訳者様に対して抱く気持ちと似ています。

「急なスケジュール変更も快諾してくれて本当に助かった。」

「今後はこの人にお願いすればきっと大丈夫」

助けが必要な時に頼ることができる翻訳者様は、翻訳会社にとってまさに神様のような存在です。

おわりに

お客様との信頼関係の構築は翻訳会社として重要な仕事の一つですが、そのためには翻訳者様と常に良好な関係を築くことが必要不可欠です。

厳しい納期や急なスケジュール変更に柔軟に対応してくれる翻訳者様は本当に有難く、その度に「この人にお願いして良かった」と実感します。 ビジネスである以上、「依頼する側とされる側」という利害関係は常に発生しますが、そんな枠を超えてお互いを信頼し合える関係を築いていきたいです。

最後までお読みいただき、有難うございました。