「and」と「or」を訳す時の注意点

医療翻訳用語の基礎

今回は、特定の単語の解説ではなく、訳文中で違和感を覚える日本語表現に焦点を当て、「and」「or」を処理する際の注意点についてご紹介したいと思います。

例えば、治験の文脈でongoing studyというと、「進行中の試験」や「実施中の試験」と訳すことができます。
次に、completed studyというと、「終了した試験」や「完了した試験」と訳すことができます。

では、ongoing and completed studiesはどのように訳すことができるでしょうか。
チェック作業をしていると「進行中及び終了した試験」という訳を目にすることがよくありますが、これは少し違和感を覚える表現です。

「及び」で接続された2つの要素(「進行中」と「終了した」)を分解し、各要素をそのあとに続く「試験」という言葉につなげると、

①進行中+試験→進行中試験
②終了した+試験→終了した試験

となります。

②の「終了した試験」は問題ありませんが、①の「進行中試験」は不自然です。
この場合、「進行中及び終了した試験」とするか、「進行中の試験及び終了した試験」とすると日本語的に自然な形になります。

例文

少し実践的な例文として以下をご覧ください。

Of the 54 subjects treated with the study drug, 13 subjects experienced disease progression or died before the cut-off date.

治験薬の投与を受けた被験者54名のうち、13名でカットオフ日前に疾患進行が認められた又は死亡した。

この訳文の場合も「又は」で接続された2つの要素を分解し、その前にある「13名」につなげると、

①13名で+疾患進行が認められた
→13名で疾患進行が認められた

②13名で+死亡した
→13名で死亡した

となります。

①は問題ありませんが、②の「13名で死亡した」はおかしな日本語です。

この場合も同様に、「又は」の前後にある「疾患進行」と「死亡」の両方が「13名」に正しくつながるように処理する必要があります。

修正例

治験薬の投与を受けた被験者54名のうち、13名でカットオフ日前に疾患進行又は死亡が認められた。

以上のように、andやorを訳す際には、andやorで接続された要素と、その前後にある要素が正しくつながっているかを注意して処理する必要があります。

最後までお読みいただき有難うございました。

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